前回の記事ではHTMLファイルの構成は英語の「普通の」文章の作り方をベースにしており、これに従った作りのファイルは人(特に西洋文明圏の人々)と検索エンジンのクローラーにとっては理解しやすいものになる、というお話をしました。今回は「人に理解しやすい」の部分で寄り道をしたいと思います。
人にとって理解しやすいとは
人にとって理解しやすい文章と一口に言いますが、それはどういったものなのでしょうか。
前回の記事で、英語の文章と日本語の文章の作り方の違いに触れました。
結論が先に提示されてその理由や説明が後に提示される英語の文章構造に対して、日本語のそれは「文末決定性」により理由や説明が先に提示されて後に結論が提示される、と言う特徴があるということです。
すると当然の疑問として、「検索エンジンが理解しやすいと言う視点は脇に置くとすると、英語圏向けのWebページはそれで良いとしても日本人向けのWebページは「理由・説明→結論」という文章の構成にしたほうが慣れ親しんだ構造なので日本人によく読んでもらえるページになるのではないか?と言うことが出てきます。
日本人からの親しみやすさと言う点で言えばこれは正しいと思います。
例えばこれが紙の上に書かれた文章で、同じ内容について英語の構造で書かれた日本語の文章と文末決定性にしたがって書かれた文章があったとしたら、日本人の大多数の方は後者の方が読みやすいと感じるでしょう。
Webの管理者の方の中には、「日本人にページの内容についてアピールしやすいのが文末決定性にしたがって書かれた文章だとするならば、一方では検索エンジンが理解しやすいの文章構造は英語の文章構造。これは矛盾ではないか?」と考える方もいらっしゃると思います。実際、確かに矛盾していると私も思い昔はこれはどう考えたら良いのだろうかと迷いました。
紙とディスプレイ上での「読むこと」の違い
ずいぶん前のことになりますが、ある精神療法士の方とお話しする機会がありました。
その方は職業的な理由もあるとは思いますが大変勉強熱心な方で医学に関する論文もよく読まれている方でした。ある時、何かの話題からパソコンのディスプレイに関する話になりました(まだスマートホンは発売されていない時代でした)。そこで教えていただいたのは同じ文章、たとえばチラシみたいなものがあったとしてそれを手に取ることができる紙のチラシとして読んだ時と、内容やデザインが全く同一だとしてディスプレイに表示したものを読んだ時に脳にかかる負荷はどれだけ違うのか、といったを実験に関する医学論文の内容でした。負荷はどれくらいかと言うとその答えは「4倍」とのことでした。ディスプレイで見る方が紙で見るより4倍脳に負荷がかかると言うのです。
なんとなくディスプレイで見る方が疲れる気がしていたので不思議はなかったのですが、そんなに負担がかかるのかと当時びっくりしたのは良い思い出です。と同時に、これは 「同じ内容だとしても、Webページは紙の1/4の時間で訪問者が離脱してしまう」 ことを裏付けていると考え、メディアの特性の違いというものを考える契機になったと言う意味で今も強烈な思い出となっています。
紙とディスプレイ上での「読むこと」の違い
このことを知って以来、最初に述べた日本人には「理由・説明→結論」という文章構造のページを提示した方が良いかどうかと言う点で私は迷わなくなりました。
つまり「理由・説明→結論」と言う構造は確かに日本人にとって親しみやすい形なので読みやすいのですが、そもそもそれ以前に脳の負担からくる「1/4」原則により文末まで辿りつかない可能性が高い=結論が読んでもらえない可能性が高い訳です。結論の部分は大抵重要なことでなおかつ最も伝えたい部分であることがほとんどですので、Web運用者としてはそれでは困ります。
したがってトレードオフの関係にはなりますが、多少唐突な感じや違和感は拭えなかったとしても重要なことは最初に提示してしまうことがWebに限って言えば完璧ではないにしろ現実的な落とし所になる考えました。これはつまり、英語の文章的な構造を採用するということです。HTMLとして考えた時に理想的な構造を保つことになる訳ですから、検索エンジン対策としてもバッチリということになりますね。
良いことづくめのようですが、いまでもひとつ心に引っ掛かることがあります。「他のメディアと比べるとWebは本質的に英語文化圏以外の人々(この中には日本人も含まれますが)にとって(微小ではありますが...)違和感を完全に無くすことができないメディアなのかもしれない」と言うことです。
皆様はどう考えますか。
次回に続きます。